超常現象情報研究センターでは、外部有識者の意見も参考にして、2023年に刊行された超常関係書籍のうち、当センターとしての推薦図書を選定しました。選んだのは、下記の5点です。なお、下記は出版順に並べたもので、順位を示すものではありません。
『白装束集団を率いた女』(金田直久著、論創社)
「“白装束騒動”から20年も経ってからパナウェーブ研究所の本が出るとは……」と驚いた一冊。教祖・千乃裕子の生い立ちから、パナウェーブ研究所創設の経緯、キャラバンを始めるきっかけ、騒動の最中とその後に何が起きていたか等が詳しく書かれており、新興宗教の研究資料として貴重。超常現象情報研究センターでは2023年7月に金田さんを講師に迎えたトークイベントを開催した。
『あなたの聴かない世界 スピリチュアル・ミュージックの歴史とリスニングガイド』(持田保著、DU Books)
書名の通り、霊的音楽のガイドブックなのだが、付随するオカルトの解説が充実しているので、おすすめに挙げた。オカルト史もそうだが、ケイオスマジック、加速主義などの最新の動向の紹介もコンパクトにまとまっていて、参考になる。超常研では2024年4月に著者のトークイベントを開催する。皆さん来てね。
『戦争とオカルティズム 現人神天皇と神憑り軍人』(藤巻一保著、二見書房)
膨大な資料を挙げながら、ユダヤ陰謀論も河豚計画も日ユ同祖論も竹内文献への盲信も、すべて軍人たちの強烈な天皇崇拝思想に結びつくことが明かされる。「神憑り軍人」という切り口で戦争裏面史を描いた意欲作。
『イラストで見るゴーストの歴史』(アダム・オールサッチ・ボードマン著、ナカイサヤカ訳、マール社)
2022年に刊行された同じ作者の『イラストで見るUFOの歴史』の続編とも言える内容。古代から現代までの幽霊や心霊現象だけでなく、妖怪やタイムスリップの事例にも触れる。
『一神教全史(上・下)』(大田俊寬著、河出新書)
本書から推察するに著者は従来の宗教学、あるいは宗教学界のあり方に疑問を抱いてきたようだ。著者によれば、そもそも宗教とは何かについてこれまで明確な定義がなかったという。自らがオウム事件裁判を通じ、日本の宗教対策の現場に引き出された経験も踏まえ、著者は、宗教とは「共同体を作り上げるために必要とされるフィクションである」という結論にたどり着いたようだ。学界での栄達を捨てて、著者が人生を賭した一冊と言える。