生没年不詳。西田香峰とも名乗る。自ら仏陀や如来の化身を自称し、明治末から大正初めにかけて、さまざまな神秘現象を見せて信者を集めていた。藤田西湖によると身長1.65メートルほど、体重は75キロはあろうかという脂ぎった男でやぎひげをたくわえて金縁眼鏡をかけ、紫の衣を身に着け、ダイヤモンドをちりばめた金の冠をかぶっていたという。
雑司ヶ谷にあった彼の大邸宅には、朝早くから大勢の書生や信者、来客が詰めかけていたが、アウンバラマ本人は毎日10時頃に起きだして信者の前に姿を見せる。
彼はその場で自分が過去に書いた日記を披露し、最近起きた事件の予言が何年も前の日記に記されていたと主張する。その内容は日付までぴたりと的中していた。
他にも仏舎利なるものを口から吐き出したり、相手の頭や体から取り出し、客と対談中突然中座し、ほんの数分後に、とてもその時間内では書けないような長い内容の、墨跡も生々しい仏典の内容を持ち帰ったりする。
しかし、当時『東京日日新聞』の記者としても働いていた藤田は、アウンバラマの館に忍び込み、彼が早朝密かに起きだしてその日の新聞を読んでから、過去の日記帳の余白に予言をしたためていたことが発覚した。
短時間で長文を書いて見せたのも、そのほとんどをあらかじめ書いておき、何文字かを筆でなぞって、さも今しがた書き上げたように見せかけたものであった。さらにアウンバラマは若いころ、ドサ周りの奇術師の一行に加わっており、仏舎利をとりだすのは、この奇術の応用であった。
藤田がこれらの事実を連日『東京日日新聞』に書き立てたため、アウンバラマは詐欺罪で捕まったという。
ただし、こうしたアウンバラマの詳細に関しては、現在藤田西湖著『最後の忍者どろんろん』(新風舎)が唯一の情報源となっている。他方、アウンバラマを名乗る怪しい人物が実在したことは確かなようだ。