水晶頭蓋骨

水晶頭蓋骨(Crystal Skulls)。

世界各地に存在する水晶製の頭蓋骨。その多くはアステカ、トルテカ、メシュテク、そしてマヤの遺品であるとされるが、正確な発掘記録が残されたものはない。
 この種の加工品が最初に記録されたのは、19世紀後半のメキシコであるが、スミソニアン博物館の人類学者ジェイン・マクラーレン・ウォルシュによれば、当時メキシコでは科学的な発掘調査はまだ行われていなかったという。
 初期の水晶頭蓋骨はいずれも高さ数センチほどの小さなもので、1856年には大英博物館が高さ約1インチ(2.5センチ)のものを購入している。
 その後1867年のパリ万博には、フランス人古物商ユージェーヌ・ボバンが2個の水晶頭蓋骨を展示し、1874年と1880年にはメキシコ・シティ博物館、そして1886年にはスミソニアン博物館が小型のものを購入している。
 人間の頭蓋骨に近い大きさの水晶頭蓋骨は、1870年代にユージェーヌ・ボバンが入手したもので、これはフランスの探検家で民俗学者のアルフォンス・ピノーが購入し、トロカデロ博物館に寄付した。現在はケ・ブランリ博物館にあり、「パリの頭蓋骨」と呼ばれている。
 ボバンは1881年、高さ約6インチ(15センチ)の水晶頭蓋骨を新たに入手し、これは1886年、大英博物館がティファニーを通じて購入した。このときのカタログには、もっと小さな水晶頭蓋骨も記載されていたという。
 その後現れたのが、「宿命の頭蓋骨」あるいは所有者の名から「ミッチェル=ヘッジスの頭蓋骨」と呼ばれるものである。この頭蓋骨については、1924年にベリーズのルバントゥン遺跡で発見されたマヤの遺品とも言われるが、記録上その存在が最初に確認できるのは1934年のことで、当時の所有者はイギリスの美術商シドニー・バーニーであった。
 他に1992年にスミソニアン博物館に送られたものや、紫水晶の頭蓋骨、マックスと呼ばれるもの、ET頭蓋骨など、多くの個人所有の水晶頭蓋骨が存在する。
 これらの水晶頭蓋骨はいずれも、アステカ、トルテカ、そしてマヤといった中南米の古代文明の遺品と言われるが、実際にはその様式はこれらの文明が作成した頭蓋骨彫刻とは様式が大きく異なり、いずれの文明でも水晶で頭蓋骨を作成した例は確認されていない。
 大英博物館、スミソニアン博物館、ケ・ブランリ博物館所蔵のものと宿命の頭蓋骨については精密な検査が行われており、いずれも19世紀以降に作成されたことが判明している。
 スミソニアン博物館のジェイン・マクラーレン・ウォルシュは、他に個人所有の水晶頭蓋骨をいくつか調査しており、それらはいずれもガラス製や樹脂製の偽物であったという。

数ある水晶頭蓋骨の中でも、アンナ・ミッチェル=ヘッジスが保有していた「宿命の頭蓋骨」は特に有名で、さまざまな伝説に彩られていた。このような精巧な加工は、古代中南米の技術では不可能であるとして、しばしばオーパーツの一つに数えられていたが、 2008年にジェイン・マクラーレン・ウォルシュが行った調査により、現代の宝石加工機器を用いた痕跡が見つかった。他の水晶頭蓋骨についても、おそらくそのすべては後世に作られた模造品であろう。
 ウォルシュによれば、アステカやトルテカでは、頭蓋骨の彫刻には玄武岩が使用され、マヤは石灰岩にレリーフで彫るのが通常だったという。
 さらにウォルシュは一連の水晶頭蓋骨について、初期の小型のものを第一世代、大英博物館のものを第二世代、下あごが外せるようになった宿命の頭蓋骨を第三世代と呼んでいる。要は、出現の年代に従って進化の跡がたどれるのである。
 パリの頭蓋骨も含め、初期のものには頭頂から垂直に穴が開いており、おそらくは十字架を立てるための穴と推定されている。
 なお、パリの頭蓋骨はアルプス地域の水晶を使用し、おそらくはドイツのイーデル・ユーベルシュタインで加工されたと推定されている。大英博物館のものはブラジル産の水晶で、宿命の頭蓋骨と同様ヨーロッパで加工されたものと推定されている。
【一覧】
 これまでその存在が公式に確認された水晶頭蓋骨は、その後紛失したものも含めて以下の通り。個人が密かに所有しているものまで含めるとその総数は不明。
1.宿命の頭蓋骨
2.大英博物館の頭蓋骨
3.大英博物館が1856年に購入した小型の頭蓋骨
4.パリの頭蓋骨
5.アルフォンス・ピノーがユージェーヌ・ボバンから購入した2番目の頭蓋骨
6.アルフォンス・ピノーがユージェーヌ・ボバンから購入した3 番目の頭蓋骨
(上記2個の頭蓋骨とユージェーヌ・ボバンが1867年のパリ万博で展示した2個の頭蓋骨との関係は不明)
7.スミソニアン博物館の頭蓋骨
8.スミソニアン博物館が1886年に購入した頭蓋骨(その後紛失)
9.重さ57ポンドの頭蓋骨
10.淡い緑色の頭蓋骨(グリーニー・スカル)
11.紫水晶の頭蓋骨
12.内部が七色に光るという虹の頭蓋骨
13.ヘルメスの頭蓋骨
14.イカボットの頭蓋骨
15.シャ・ナ・ラの頭蓋骨
16.ソクラテスの頭蓋骨
17.マックスと呼ばれる頭蓋骨
18.マハサマトマンの頭蓋骨
19.ETの頭蓋骨
20.マドレの頭蓋骨
21.1912年に発見されたマヤの頭蓋骨
22.コロラドにある歪んだ頭蓋骨
23.ブルースター・メイドンの頭蓋骨
24.その他(1863年以前にもメキシコでいくつか確認されているが総数等の詳細は不明)

【参考】
ASIOS『謎解き古代文明』彩図社
Fortean Times第237号

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