古代宇宙飛行士説

古代宇宙飛行士説(Ancient Astronaut Theory, Space God Theory)。太古の地球に他の天体から異星人が飛来し、世界各地にさまざまな痕跡を残しているという考え。日本ではUFO研究団体「宇宙友好協会(CBA )」が用いた「宇宙考古学」という呼び名が広まっているが、英語を直訳すると「古代宇宙飛行士説」あるいは「宇宙神理論」となる。
 この説を唱える論者の多くは、太古に地球を訪れた異星人は、単にさまざまな痕跡を残すだけでなく、その進んだ科学技術に恐れをなした当時の地球人から神として崇められたと主張することが多く、さらには遺伝子操作で人類を創世し、文明の創世に関与したと主張する者もいる。
 この主張の根拠として採用されるのが、世界各地に残る文明神に関する神話や伝説、さらにはその遺物が属する時代の技術ではとうてい作成不可能とされる加工品、いわゆるオーパーツなどである。こうした神話やオーパーツについては、超古代文明の存在を主張する者も共通して引用するものが多く、したがって宇宙考古学は超古代文明の主張とも密接に結びついたものとなっている。そこで欧米では、アトランティスやレムリア、地底世界アガルタといった場所に古代の異質な文明の存在を主張したサンティーヴ・ダルヴェイドル(1942~1909)やヘレナ・ペトロブナ・ブラヴァツキー(1831~1891)などが古代宇宙飛行士説の元祖的存在とされることもある。
 オーパーツや各種文明神にまつわる神話の源泉が、アトランティスやレムリアなど古代地球の文明から異星人に置き換わるためには、当然ながら、異星人の存在と、その異星人が地球を訪れる可能性とが取り込まれる必要があり、太古の地球に飛来した異星人が各種のオーパーツを残したとの主張は、ジョージ・アダムスキー(1891 ~1965)などUFOで飛来した異星人との接触を主張する、いわゆるコンタクティーが出現して以後のことである。
 具体的には、1950年代後半になってアメリカのモーリス・K・ジェサップ(1900~1959)が聖書と異星人の関係を指摘し、ほぼ同時期に、ジョージ・ハント・ウィリアムソン(1926~1986)が、友好的なスペースブラザーズが地球人に文明を教えたという主張を展開し始めた。世界各地のオーパーツや神話、伝説などを丹念に拾い上げて異星人と関連付ける作業は、イタリアのピーター・コロシモ(1922 ~1984)やイギリスのレイモンド・ドレイク(1913~1989)などが1960年代に行っており、これを引き継いだエーリッヒ・フォン・デニケン(1935~)の著作が1970年代に世界的ベストセラーになったことで一般にも普及した。

 地球よりはるかに進んだテクノロジーを持つ異星人が存在するとすれば、その分彼らの歴史が地球人類より古いということも想定される。そうした異星人の歴史と地球人の歴史にどれだけの時間差があるかはもちろん不明だが、彼らが数千年も前に恒星間飛行の技術を開発して地球を訪れるということは、少なくとも観念上は肯定できる内容であろう。
  他方、古代宇宙飛行士説の論者が主張する、異星人の地球訪問の根拠とされるものは、いずれも証拠能力に欠けると言わざるを得ない。

 神話や伝説には、必ずしも歴史的事実の裏づけを求めることはできないし、いわゆるオーパーツについても、それが属する時代の技術で作成不能と確認されたものはない。インカのジェット機やデンデラのレリーフなど、その形状がたまたま現在のジェット機や電球に似ているとしても、それらは単なる手製の金細工や石に刻まれたレリーフであり、その作成自体に特殊な技術は必要ない。

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