ハンス・ベンダー

ハンス・ベンダー(Hans Bender)、1907~1991。ドイツの超心理学者。ドイツのフライブルクに生まれる。17歳のとき、家族と共に滞在していたロンドンでウィジャ盤を試したことから心霊現象に関心を持つようになる。高校卒業後はパリ、ハイデルベルクなどで文学や哲学、心理学を学ぶが、パリでフランスの心理学者ピエール・ジャネ(1859~1947)とその著書『心理自動現象』に影響を受け、その後1933年にボン大学で心理学博士号を得る。博士論文は自動作用に関するもので、このとき自動書記の研究対象となったヘンリエッテ・ヴィーヘルトと1940年に結婚している。
 この頃、同時に医学も学び、その後精神科医として勤務もしているが、正式な学位は得ていないのではないかとの疑惑も持たれている。
 博士号取得後は透視や水晶球凝視などの研究も行い、カール・エルンスト。クラフト(1900~1945)など占星術師の協力を得て西洋占星術の信憑性も検証しようとしている。
 戦後になると、1950年よりフライブルグ大学の「心理学および精神衛生学の境界領域研究所」の所長に就任。1969年には超心理学協会会長も務めた。1975年の退官後は、1991年に死去するまで個人の研究所を運営していた。
 1967年のローゼンハイム事件を調査したことは有名であるが、他にもオランダのテンハフ教授(1894~1981)と共同してピーター・フルコス(1911~1988)の椅子テストを行い、ユリ・ゲラー(1947~)の金属曲げ、さらにはベルメスの顔事件についても調査を行うなど、現地調査で多くの事例を手がけた。

 ハンス・ベンダーは、20世紀ドイツを代表する超心理学者であり、ドイツにおけるこの分野のパイオニアと言ってよいであろう。
 彼の超心理学に対する関心は、17歳のときに経験したウィジャ盤による自動書記であり、心理学の博士論文は自動作用に関するものであった。ドイツではじめて設立された大学付属の超心理学研究所の所長を長年務め、超心理学協会会長も務めた。有名なローゼンハイム事件やベルメスの顔、ピーター・フルコスやユリ・ゲラー、さらには水晶球凝視や西洋占星術など、非常に広範な分野で数多くの事例を研究し、どちらかといえば肯定的な評価を下し続けていたようである。さらには、自動書記の研究対象となっていた女性と結婚し、彼女との間ではテレパシーで意思疎通ができると信じていたり、精神科医の学位に対する疑惑を持たれたり、超能力者や霊媒だけでなく、UFO研究家や占い師などとも関わりを持ち、その調査の科学性・厳密性には疑問も持たれている。じっさい、彼が真正と判断したポルターガイスト事件が、のちにいたずらと判明した事例もいくつかあるらしい。
 要は、超心理学者としてはかなり有名ではあるが、科学者としてその研究手法を見ると、けっこういかがわしかったり、厳密さを欠く部分もあるということで、その主張はそのまま鵜呑みにはできないだろう。こうした点はスケプティックからの攻撃材料ともなっている。
 なお、フライブルク大学でのベンダーの講義は、講義室の照明を消し、教授の目の前の読書用ランプを灯しただけの状態で、過去に遭遇した多くの事件について物語るという形式であった。要は、講義というより怪談話のようなものであるが、学生だけでなく、オカルト話の好きな一般市民まで大勢押しかけて、常に大盛況であったという。

【参考】
Ellic Howe『Astrology & the Third Reich』the Aquarian Press

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