ゲオルギー・ロザノフ

ゲオルギー・ロザノフ(Георги Лозанов、Georgi Lozanov)、1926~2012。ブルガリアの医師、超心理学者。日本では「加速学習(スーパーラーニング)」の基礎となった「サジェストペディア」の開発者として知られる。
 ギムナジウムの歴史教師であった父と弁護士の母との間に生まれるが、2歳で母を失う。1944年、ブルガリアで共産主義政権が誕生した年には、共産主義に反対する友人たちを庇ったとして逮捕されたこともあるという。恩赦による釈放後、ソフィア大学医学部に進むが、当時の政権に睨まれていたため種々の圧力を受けたという。
 他方、学生時代には友人を催眠術にかけ、別の友人が何をしているか透視させたところ、正しく言い当てたという経験をしている。また20代の頃、 ブルガリアの予言者ヴァンガ・ディミトローヴァを訪問し、その際には自分の名前や訪問目的を告げられたという。こうした経験から超心理学にも関心を有しており、 大学院では脳生理学、教育学及び心理学の学位を得たが、共産主義政権との関係から病院の職を転々とし、一時は政権の圧力で解職されたため、自動車修理工をしていた時期もあるという。 しかし1966年10月になって、「国立サジェストペディア研究所」所長に任命され、サジェストペディアの研究とともに超心理学研究も行っていた。当時ロザノフと面会したシーラ・オストランダーとリン・シュローダーによれば、ロザノフはこの研究所で、サジェストロジー[1]の他、PKや皮膚光知覚、テレパシー、 ヒーリングなど、人間の超感覚や潜在能力に関するさまざまな研究を行っていたという[2]
 その後ブルガリア政府は、サジェストペディアが共産主義思想と相容れないものと判断したため、ロザノフは1980年1月から軟禁状態に置かれ、研究職以外のすべての公職から追放された。「国立サジェストペディア研究所」もまもなく閉鎖されたが、ロザノフはソフィア大学内に「サジェストロジーおよび人間性開発センター」を設立し、所長となった。しかし、そこでの研究成果を国内外に発表することは認められなかった。この間ロザノフに同情的であったオーストリア政府は、軟禁中のロザノフに市民権を与え、ブルガリア政府に対して出国を要請したが実現しなかったという。1989年の旧共産圏崩壊に伴い、ロザノフも解放された。以後は日本をはじめアメリカやヨーロッパ各地でサジェストペディアの普及に努めた。

【評価】
 日本では「サジェストペディア」の開発者としてしか知られていないが『ソ連圏の四次元科学』(たま出版)では、当時のブルガリアを代表する超心理学者として紹介されている。
 『ソ連圏の四次元科学』の著者が1968年にブルガリアを訪れた当時ロザノフは、国家機関である「国立サジェストペディア研究所」の所長を務めており、そこで超心理学の研究も行っていたことから、ブルガリアが国家ぐるみで超心理学研究を進めているような書き振りで紹介されている。それによれば、ブルガリアを代表する予言者ヴァンガ・ディミトローヴァの研究や65人の超能力者の調査、テレパシーにより被験者に左右どちらかの電信機を押すよう働きかける実験、遠方から被験者を催眠状態とする実験も行たという。
 ロザノフによれば「サジェストロジー」は人間の潜在能力を開発するための理論であり、この「潜在能力」にはESPも含まれるようだ。「サジェストペディア」は「サジェストロジー」の実際の実践法ということであるが、主として数学や語学などの教育に応用された。日本でも1986年に「日本サジェストペディア学会」が設立され(2012年に解散)、1989年1月、ロザノフと協力者のエヴェリナ・ガテバは産業能率短期大学とそのサジェストペディア研究室および日本サジェストペディア学会の共同招待で来日している。サジェストペディアの有効性については、当法人の目的に照らし判断を避けるが、他の教育法と比べて効果に大きな違いはないとする論文が、当の「日本サジェストペディア学会紀要」に載ったこともあり[3]、現在教育現場ではほとんど活用されていない。もっとも、ロザノフが軟禁状態にあったため、各国で独自に「サジェストペディア」を名乗る手法が生まれ、中にはロザノフの主張とかけ離れたものもあるという。 軟禁中及び解放後、ロザノフが超心理学研究を続けていたかどうかは現時点では不明。

【脚注】
[1]シーラ・オストランダー、リン・シュローダー著『ソ連圏の四次元科学(下)」』P138等では「暗示学」と訳されているが現在では「サジェストロジー」の方が一般的。
[2]上記[1]P138~141。ロザノフのテレパシー研究については他の箇所にも言及がある。
[3]浅野紀和、浅野幸子「サジェストペディア授業の効果について」(日本サジェストペディア学会紀要第五号)

【参考】
S・オストランダー、L・シュローダー『ソ連圏の四次元科学(下)』たま出版
Sheila Ostrander, Lynn Schroeder『Psychic Discoveries』Marlowe & Company(上記の増補版)

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